崖の上のポニョ

art-study2008-08-09

 見てきました。いやいや、おもしろかった。
 この映画のストーリーは、つじつまの合わない点がいくつもある。でも、ここがおかしい!っていちいちあら探しをしていると理解できないと思います。一見、実際の世界を舞台にしているようではあるけど、違う世界の話なんだと思って見たほうが分かりやすい。そもそも、話の筋は重要ではない映画だと思うし、僕らの知らない世界の話だと思って見てはいかがでしょう。目指したのはおそらく「動く絵本」。タイトルが出るまでの映画冒頭の映像が、ほんとうにキレイでした。今回の映画では「新しい映像表現への挑戦」をテーマにしていたのではないでしょうか。
 聞いた話によると、今までジブリでは実験的に短編でしか取り組んでいなかった映像手法で作ってみたんだそうです。見てみれば分かるんだけど、背景は色鉛筆などで描いていてパースも適当な絵画(絵本)的手法、動画はアニメ的なベタ塗り。そこのちぐはぐさがおもしろい。しかも、動画の部分は今回初めて「フルアニメーション」になったんだそうです。
 ところで、「フルアニメーション*1」って何でしょう。従来の日本のアニメーションは「リミテッドアニメーション」って言って、たとえば口しか動かないシーンは、口だけを作画してキャラクターの他の部分は使い回していました。では、「フルアニメーション」がどんなものかというと、口しか動かないシーンでも、キャラクターのすべてを作画するんですね。使い回しはしないために、同じような絵柄でもいちいち描き直す必要がある。つまり、手間と時間がかかる。しかし良い点もあって、監督いわく「手描きのわずかなぶれで、アニメの息づかいのようなものまで表現できた」んだって。
 まとめると、宮崎監督がアニメーションの新しい可能性を探るために作った映画だと思います。そういう点で、アバンギャルド(前衛的)な作品。カメラワークもおもしろかったよ。画面がグイングインとよく動く。よく考えるとアニメって、実際の映像ではできないことをやらないとおもしろくないよね。今後のアニメへの可能性を感じる映画でした。
 ・・・でも、子どもは喜ばないかもなぁ。本作では、大人が頭で考えすぎちゃった点と、子どもに委ねすぎちゃった点が目につきました。子ども向けエンターテイメント作品として成立しているかと問われると、返答に窮する。ん〜、難しいね。


http://bb.goo.ne.jp/special/gb/0807/interview.html(注:携帯禁)
 崖の上のポニョについてのインタビュー。(少しネタバレします。注意。)

ほぼ日刊イトイ新聞 - ジブリの仕事のやりかた。(注:携帯禁)
 おまけ。ハウルの時のジブリ主要メンバーへのインタビュー。25回まであって長いですが、非常におもしろい。宮崎映画のちぐはぐな部分にも納得がいく。

*1:ちなみに、フルアニメーションの代表は、ディズニー作品。