ノーカントリー

ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

 2007年アカデミー作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞を受賞。
 原題は「No country for Old Men」。どう訳すのがいいのか。「老いた者のための国ではない」ってなもんでしょうか。見終わった後にすごく複雑な心境に陥りました。いろいろと考えてしまってちょっと一言では表せない。でも、テーマを乱暴に表現するならば、迫る死と向き合おうとする話ですよ。登場する人物たちは、それぞれに死と向き合うことになります。
 ストーリーはいたってシンプル。ひょんなことから大金を手に入れた男が、殺し屋に延々と追いかけられる。もう、殺し屋が残忍で強くて理不尽でね。無表情に、なんかよく分からんくらい派手で乱暴な殺し方をする。たとえ、筋が通っていようとも、ごめんなさいしようとも許してくれない。あんなのにだけは追いかけられたくないと思います。
 なかでも注目すべきは、傍観者的な立場で事件を追いかける老保安官です。異常な殺人事件を追いかけるなかで、老保安官は否応無く死と向き合わざるをえなくなります。死は突然理不尽に訪れるものなのだと理解はしていても、おそれる心と受け入れようとする心の狭間で葛藤します。そして、ある選択をします。それが、私は悲しく寂しい選択だと思います。
 この映画はアメリカの病巣に鋭く切り込んだ映画なんじゃないでしょうか。私は社会は時代の流れとともに変革していけば良いと思っていますが、この映画の老人たちが嘆くように「社会がどんどん悪化している。止める力が無い。」と無力感に苛まれるのも分からんでもありません。
 現世は理不尽な出来事に満ちあふれています。いつ、何が起き、どんな状態に陥るか分からない。それでも、生きていかなければならない。その決意を示した映画です。


 注意:暴力的な表現が多いので、苦手な人は見ないように。