ノー・マンズ・ランド

ノー・マンズ・ランド [DVD]

＜ストーリー＞
1993年6月。ボスニア紛争の最前線。霧で道に迷ったボスニア軍の兵士たち。いつの間にか敵陣に入り込み、気づいたときにはセルビア軍の攻撃が始まっていた。唯一の生存者チキは、なんとか塹壕にたどり着き身を隠す。そこは、ボスニアとセルビアの中間地帯“ノー・マンズ・ランド”。偵察に来たセルビア新兵ニノと老兵士はボスニア兵の死体の下に地雷を仕掛けて引き上げようとする。その瞬間、隠れていたチキが二人を撃ち、老兵士は死に、ニノは怪我を負う。チキとニノの睨み合いが続く中、死んだと思われていたボスニア兵が意識を取り戻し……

　2002年アカデミー外国語映画賞を受賞した作品。ボスニア・ヘルツェゴビナでの紛争を描いているのだけど、おもな舞台は塹壕の中。そこには対峙する敵同士の兵士二人がいます。そして、その間には横たわる兵士。横たわっているのには理由があり、背中に地雷があるために身動きがとれないというもの。彼らは三すくみの状態のまま、互いの戦う理由について語ります。
　

　閉鎖された空間でのやり取りは、まるで演劇を見ているかのように感じます。彼らの掛け合いは軽妙かつ緊張感にあふれ、時としておもしろい。ついつい、笑っちゃう。でも、笑ったあとに、はっとする。常に根底に流れるのは戦争の不条理です。きっと、戦争にどちらが正しいなんてことはないんだよね。

　悲惨なシーンはあまりなく見やすいのだけど、「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれるバルカン半島の民族問題の根深さを深く感じさせる作品です。