小さい頃の思い出。

 私は幽霊の存在を信じていない。占いの類いも眉唾ものだろうと思っている。でも、世の中には、人間とは違う何かがいるんじゃないかとは感じてる。


 小さい頃に、時折出現する少年(・・・おそらく)がいた。いつも何の前触れもなく、一瞬にして目の前に現れた。
 背丈は同じくらい。きれいな顔をしていたが年齢はよく分からない。彼は必ず激しく怒っていて、私の前に立ちふさがった。そして、聞き取れないほどの早口で、私に対してまくしたてた。きっと私に対して怒っているんじゃない。人間という存在の代表として、私に怒っている。そう感じた。不思議と怖くはなかった。
 まだ物心ついて間もない私は、何か悪いことをしたような気になって、いつもその場で泣いてしまった。すると、急いで母が階段を駆け上がってきて、何も聞かずに優しく抱きしめてくれた。母の肩越しに彼はまだたたずんでいて、今度は少しニコリとしてじきに消えた。


 一度、UFOにも遭遇した。
 小学校からの帰り道、少し遅くなり家路を急いでいる時に、突如として目の前に現れた。それはあまりにも大きく、空を覆うほどで、私は思わず立ちすくんだ。映画「未知との遭遇」で観たことがあったので、きっとそういうものなんだろうと考えたものの、どうしたらいいのか分からなかった。
 その刹那、目の前を覆う影はこつ然と姿を消した。


 きっと、少年時代というのは、何かを視てしまうものなのだろう。何人かに話をしたが、子ども時代によくある想像力の強さゆえだと笑われた。私もそう思う。
 だけど、私の記憶にはしっかりと残り、根本の部分を形作っているような気がする。