地震に対して私たちができること。

 あなた方へのメッセージです。


 地震が発生してからずっと、テレビをつけると被災地の状況が常に映し出されています。本当に悲惨な状況です。インターネットを見てみても、ツイッターなどを中心に地震についての情報が多く寄せられています。しかし、全ての情報が正しいとは限りません。もしかしたら、友達との話も地震の被害についての話かもしれません。あなたの大切な人たちに何も起きていなくても、その親類などが巻き込まれている可能性もありますし。
 東京は幸い死傷者の数も少ないので、あなたたちも無事でいることだろうと思います。でも、多くの人たちの心は確実に傷ついています。あなたたちも例外ではありません。


 どうして、こんな悲惨な状況になったんでしょう。考えても誰にも分かりません。これから、どうなるんでしょう。強い揺れがくるのか、原子炉は止まるのか、被害は拡大するのか。それも分かりません。
 分からないことだらけです。きっと、不安ばかりが押し寄せて、夜もあまり眠れないんじゃないかと思います。


 今、私たちは未曾有の災害に立ち向かおうとしています。当然、あなたたちもその一員です。



 災害に立ち向かう際に一番大切なことって何だか分かりますか? それは、自分の身をしっかりと守ることです。それが出来たうえで、被災地の方々のために何かができます。


 あなたたちに、言いたいことは一つです。
 こんな状況の中、何をしたらいいか分からないかもしれない。でも、自分の身を、心をしっかりと大切にして下さい。一人ひとりがまず自分を守ってあげて下さい。常に正しいのか正しくないのか分からない情報が流されています。もしも、辛くなったら、そっとテレビやパソコンを切って、好きな本を開いたり音楽を流したりしてください。それは、決して、被災地にいる方々を裏切る行為ではありません。

 自らの人間性を保つことができたら、日常生活に戻りましょう。いつもと変わらない日々を取り戻して下さい。友達と笑い合ったり、好きな人のことを考えたりしてください。そして、学校へ行きましょう。

 今、被災者の方々のためにあなたたちにできることは、あまりありません。悔しいだろうけれどもこれは事実なんです。これから、事態の推移を見守り、覚えておいて下さい。そして、多くのことを考えて学んで下さい。そして、事態が落ち着いたら、みんなで役に立たないような学校の勉強をしましょう。



 学校の勉強は、どうしてしなきゃいけないんでしょうね。それは、君たちが力を手に入れるためだと思います。現実を変えるための力です。
 今、原発を食い止めようとしている人たちがいます。身につけた知識を駆使して、なんとかしようと頑張っています。
 被災地の方々を救助するためには、多くの機材が投入されています。きっと、手からこぼれ落ちて行く砂のような命を、少しでも多く救うために使われます。
 少し、事態が落ち着くと復興計画も立てられます。その時には、もう一度同じ事態が起こった時には対処できるようにと、専門家が町並みをデザインし、建築家が耐震強度の高い建物を作ります。
 新しい街では多くの商店が入ります。人々にも活気が戻ることでしょう。その中心には、震災の記憶を風化させないようなパブリックアートが設置されるはずです。アーティストの思いが強く込められた、人々のための作品です。


 もう一度言います。
 今、被災者の方々のためにあなたたちにできることは、あまりありません。悔しいだろうけれどもこれは事実なんです。


 でも、10年後は違います。何かできるかもしれない。


 今と違い、将来には可能性があります。学ぶということは、将来待っている何かのために行われるものです。それは、君たち自身の将来かもしれない。人類の発展のためかもしれない。将来待っている災害に対抗するための手段かもしれない。今は役に立たないように思われる勉強も将来への土台になります。
 何かのために、何かを変えられるだけの力を手に入れるために、私たちは学ぶのだと思います。


 明日から日常が始まります。私は、そんな日常を支えたいと考えています。
 また、明日。



<3/20 一部訂正>