「家の外の都市の中の家」@オペラシティアートギャラリー(初台)


家の外の都市の中の家|東京オペラシティ アートギャラリー


 第12回 ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の日本館で開催されたものの帰国展です。美術的に美しいというようなものではありませんが、非常に勉強になりました。私たちの環境を振り返るには参考になりそうなので、ちょっと小難しいこと書いちゃう。
 東京という都市が世界に例を見ないのは、建物の立て替えが激しく、日々新陳代謝をくり返しているということだそうです。これは、国立新美術館の設計も手がけた黒川紀章らが1960年代に提唱したメタボリズムという考え方なんですが、近年の日本はそこからさらに発展し、新たな局面を迎えているのではないかという内容でした。「ヴォイド・メタボリズムというのだそうですが、これって、私たちが日々暮らしている環境がどうなっているのかっていう考察です。ちなみに、ヴォイド(void)は隙間。東京という都市は、無数の隙間から成り立っています。

「ヴォイド・メタボリズムの考え方」

 東京の戸建て住宅の寿命は30年。これは先進国のうちでもかなり短いうちに入ります。第二次世界大戦以降、少なくとも2回の世代交代を経て、東京は特徴的な進化を遂げています。それはいくつかに場合分けされます。

アーバンビレッジ(urban village)

 関東大震災第二次世界大戦で木造住宅が広域延焼した反省を踏まえ、防火対策を強化した。大きな道路沿いは防火区域に指定され、耐火性の強い大きな建物しか建てられない。しかし、それらに囲まれた内側の区画には昔からの木造住宅が広がっている。

コマーシデンス(commersidence)

 高度成長期に汚染された河川は、蓋をされ地下化した。その地上部は道路指定され、道路の脇には河川時代からの住宅と、商業ビルが隣立することになった。

サブディバーバン(subdivurban)

 負担の大きい相続税により家屋を手放す人が多かった。手放された土地は細分化され、新たな家が建てられた。敷地が小さくなることにより、平屋(庭、駐車場付き)→二階建て(庭なし、駐車場つき)→三階建て(庭なし、一階部が駐車場)へと変化した。それぞれの家の間には隙間があり、路地が増えた。


 詳しい図版などは以下のリンク先に載っています。興味のある人はどうぞ。ちょっと難しいけど。
[http://db.10plus1.jp/backnumber/article/articleid/755/:title=TOKYO TECH OCW]



 再発見したことは東京は細かい路地が特徴的であるということ。路地に生活がある。
 外国を旅行していると、ヨーロッパの都市部などはとくに計画的に建設されています。街は碁盤の目状に通りが走り、その通りで仕切られた部分が一つのブロックになっています。街は耐久性を重視して石造りで、マンションに多くの人が何世代も交代して住んでいます。
 日本は違います。大計画がなく開発され、無数の路地が思い思いの方向に伸びています。戸建てが多く、木造建築は耐久性も低かった。新陳代謝をくり返すことにより、無秩序に路地が増えていきました。
 それらはネガティブな捉えられ方をされることが多かったんですが、今回はそれを肯定的に捉え直し、これからは路地を活用して生きていこう!っていう提案でした。そこが特徴的で面白かったです。
 また、欧米は一つのブロックに住居と職場が同居していることが多いです。つまり、家から職場までが近い。日本は住宅地と商業地が別れているから、かなり遠いですよね。平均通勤時間は70分だそうですよ。アーバンビレッジやコマーシデンスを活用して、職住隣接を目指すことで活気ある町づくりをできるんじゃないかというのも興味深い提案でした。


 ちょっと目先の変わった展覧会。大きな模型なんかもあって面白いです。美術館へ行って美を鑑賞するのとはちょっと違いますが、興味のある人はぜひ。