宮島達男さんの講演会へ行ってきました。

 宮島達男さんは、どんな作品を作るのかというと、こういうものです。空間自体を作り出してしまう作品形態を、「インスタレーション」って言います。

 紹介はwikipediaから抜粋。

 宮島は、藝大在学中から作品発表を開始し、1980年代には街頭でのパフォーマンスや家電製品などを利用したインスタレーションなどを行っていた。LEDを使用した作品を最初に発表したのは1987年である。1988年、ヴェネツィアビエンナーレの「アペルト88(若手作家部門)」に出品した作品 "Sea of Time" が高い評価を得、国際的に知られるようになった。"Sea of Time" は、暗い部屋の床一面に発光ダイオードの数字が明滅するものであった。以後、世界各地で作品を発表し、1999年のヴェネツィアビエンナーレには日本代表として出品。この頃から世界的に高い評価を得るようになった。
 宮島の典型的な作品は、暗い部屋に置かれたLEDのデジタルカウンターが、「1」から「9」までの数字を刻むものである。デジタルカウンターは数千個単位で用いられることが多い。注意すべきことは、デジタルカウンターの刻む数字は「1」から「9」までであって、決して「0」(ゼロ)を表示しないことと、その明滅する速度が一定ではなく、個々の LEDによって異なることである。*1
 これは、人間が生まれ、死に、そして再生する「輪廻」の東洋的な思想を現代のテクノロジーを用いて表現したものだという。東京都現代美術館に設置された作品『それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く』(1998年)は、関係性、永遠性といった宮島のテーマを作品名に如実に表わしたものである。
宮島達男 - Wikipedia


 要は、カウンターが個々に違うスピードでカウントダウンすることによって、観る人はあたかも生き物を観るかのように、有機的に感じてしまうという作品です。そこにメッセージがあるんですね。「0(ゼロ)」になると、表示が消え、無になるというところがミソ。


 さて、講演会の内容はどうだったのかというと、良かったですよ。テーマは
「社会にとって、芸術は必要なのか」。
彼は、芸術家には2つのソウゾウリョクが必要であると言っていました。

  • 想像力(imagination) ・・・・・他者の痛みを理解し共有する力。
  • 創造力(creativity) ・・・・・新しいものを生み出し、現状を打破する力。


 他者の痛みを理解し、その痛みを社会に訴えるような作品を作ることが芸術家の使命である。芸術は社会にメッセージを発信し、世の中をより良い方向へ向けることができる。それが、芸術の持つすばらしい力だと語っていました。彼は、約30カ国で展覧会を開催した経験から、世界では芸術家の果たす役割が大きく、社会のなかで必要不可になっていると感じたそうです。しかし、悲しいことに、日本では必要とされていないんじゃないかとも感じているそうです。何が違うんだろう。文化的な土壌が違うこともそうだけど、制作者と鑑賞者の意識も違うのかもしれません。
 彼の言う「世の中をより良い方向へ向ける力」ということは、大事なことだよね。制作者は忘れがちです。また、日本では社会の中で、「感性」というものが置き去りにされているのかもしれません。作品からメッセージを感じて、自分や社会はどうなんだろうと省みる。そういった、鑑賞する側の感性です。なんでもかんでも割り切れるものばかりじゃ、面白くないのにね。

*1:ゼロを表示しない代わりに表示が消えます